
高校生のときだったかなぁ。
学校帰りに、高台にある実家のすぐ下の道を歩いていたら、
白に茶色の模様が入ったノラ猫が横にある石段の上からひょいっと飛んできて、
わたしの歩く後ろをついてきた。
かばんに鈴のついたキーホルダーを付けていたので、
鈴の音に何か記憶があるのかなーなんて思ったことを覚えている。
家までの長い階段を上り始めても着いてきて、上りきってもまだ着いてきていた。
(その姿を覚えているわけじゃないんだけれど、考えただけでキュキュンとするねぇ...)
そして家の下に到着して、あまりにも着いてくる姿がかわいかったので、
飼えないけれどせめて家から何か食べられるものを持ってこようと思い階段を上がり始めると
2階まで一緒についてきてしまったので、「アカンよ」と小声で制止したらそこで止まった。
家には白ご飯があったので、オカカとちりめんじゃことご飯を用意したけれど、
「ノラだし、降りて行ってももういないかも知れないなー」なんて、
自分がガッカリすることを避けて期待せずに降りて行ったら、そのノラ猫はまだそこにいた。
わたしが制止した2階ではなく、1階に降りてこちら側を向いていた。
ごはんをあげた。
お腹がいっぱいだったのか舐めたくらいでほとんど口を付けなかった。
でも、ノドをグルグル鳴らしながらずっとわたしの足に鼻先を押し付けていた。
人が恋しいのかなぁ?
昔、飼われていた子なのかなぁ?
そう思いながら撫でて、小さな段差のあるところに座ると、ひょいっと膝の上に登ってきて、
ほどなくしてその子はそのまま寝てしまった。
そうしていたのは、夕方から空がうす暗くなるまでの30分くらいだったと思う。
初めて会ったのにすやすやと自分の膝で眠るその子がかわいくて仕方がなかった。
ただその1年近く前に、その時期一緒に過ごしていた猫たちと離れなくてはいけなくなり、
それからは動物を飼えないことがわかっていたので、その子を家に連れては帰れなかった。
夜が近づいてきて、わたしは部屋に戻ることにした。
膝にのっていた子を下ろしたとき、その子がもっと離れたくないという行動をとるのかと思ったけれど、
以外にもその子はあっさりと離れた。
すり寄っても来なかった。
ただじっとわたしの顔を見ていた。
ほんとうは、別れが悲しくなることをしたくなかった。
だから後ろをついてきたことに気づいても知らないふりをしたし、
家のそばまでついてきても、撫ではしなかった。
一度ごはんを取りに家に帰ったときも、もう家の下からいなくなっていればいいと思った。
「そりゃそうだよね」と思いたかった。
でもそのノラ猫はちゃんとそこで待っていたんだなー。
かわいかったんだなー。
勝手な人間の妄想かも知れないけれど、
あの子はそうやっていろんな人の膝の上で暖をとって、
その温もりに自分が本能的に必要なものを感じて、
でも、その場を離れた人間が次にはもうそこに戻ってはこないことを
知っているんだろうなー。
だから、わたしがその子のそばを離れたとき、
今まで膝で寝ていたことが嘘だったかのように、
何の未練もないかのように、あの子も離れたんだろうなー。
そんなことを思うのは人間だけ、
ただあの子はついて行きたかったからついてきただけ、
相手に離れられたから自分も離れただけ、だったのかなー。
でも、心底、安心した顔ですやすや眠っていたんだよなー。
その子は、次の日もその次の日も現れることはなかったんだー。
わたしの方は、こんな猫好きな人間だし、
また会えるような期待をほんのちょっと抱いていたんだけれど。
たった1日の、その1時間にも満たない時間だけれど、
その子のことは20年近く経った今でもずっと覚えている。
今生きていたらものすごく長老の猫だけれど、生きていたら会いたい。
そんなことをふと思い出した今宵。
会いたい子(みんな動物)、いっぱいいいるなー!